正しいトレーニングの効果を実感するには、バーベルやダンベルを扱うだけではなく、もう一歩深くトレーニング科学を理解する必要があります。この章では、筋肥大や筋力増強の仕組みについてをシンプルにまとめています。決して難しいことではありませんので、一緒に学んでいきましょう。

筋肥大とそのメカニズム

筋肥大は筋肉が大きくなることを意味します。トレーニングの刺激で筋肉にメカニカルストレスが働き、その結果として体内に成長ホルモンが分泌されます。筋線維を太くするには、成長ホルモンとトレーニングによるストレスの両方が必要です。例えば、ホルモン濃度をあげる方法が別にあったとしても、トレーニング刺激なくして、筋肥大の効果はあまり期待できないのです。ホルモン濃度を増加させる目的で、先に大きい筋群をトレーニングすれば、後から小さな筋群もその恩恵を受けられるという考え方もあります。ただし、メカニカルストレスはホルモン濃度が高くなっている筋肉に働くものです。つまり、こうしたやり方は筋肉を大きくすることに、本当に貢献しているのかどうかは、まだ誰にも分かっていません。

筋肥大は成長ホルモンによって誘発されるものです。ただし、その筋肉に働く機械的な刺激も同じくらい重要です。

筋力増強とその仕組み

筋肥大とは少し違い、筋力増強には神経が関わってきます。バーベルやダンベルを使用した筋力トレーニングを継続的に行えば、神経の適応が起こります。つまり、神経によって筋肉の制御が強化され、もっとうまく筋肉をコントロールできるようになります。結果的に、筋力(力)がつく訳です。神経の適応は割と速く起こるため、筋肥大よりも速く筋力がつきはじめるのです。 筋力は神経の適応によるものであり、たった1〜2回の正しい筋トレでも効果は見られると報告する研究論文もあります。できるだけ早い段階で正しいトレーニングを身につけることが重要です。

< 定義 > この章や教科書全体で、筋細胞と筋線維という言葉を混合して使っています。筋細胞は線維状の細胞であるため、筋線維とも呼ばれています。両者の意味は同じです。

トレーニング効果は継続的に起こる超回復の繰り返し

超回復について、このようなイメージを持っていませんか?筋力トレーニングでダメージを受けた筋繊維は、さらに強く修復され、筋肉が少しずつ強くなっていく…。筋細胞が破損してから、アミノ酸によって治される…。まるで破壊と再生を繰り返しているかのようなイメージ…。実は、筋線維は破損しません。筋線維が破損する程度のダメージを受けたら、その細胞が壊死してしまうからです。トレーニングによる刺激では、筋細胞の構造が崩れるだけです。この細胞を修復するには48〜72時間ほどかかり、その間に超回復が起こります。超回復によって筋細胞は以前に比べ、若干強く修復されます。こうやって私たちの身体は強くなっていくのです。ところが、超回復が間に合わないと下図のように体が弱ってきてしまいます。このパターンの場合、ほとんどの原因はトレーニングやり過ぎにあります。うまく機能していない超回復(トレーニングやり過ぎが原因)

Aはトレーニグ前、Bはトレーニグ後で、Cは超回復が起こるべき時点です。残念ながら、やり過ぎなトレーニングスケジュールによって超回復(C)が起こらず、筋細胞は完全に修復されていません。疲労が抜け切れていない状態でトレーニングを続けると、筋量や筋力も減っていきます。これは決して望ましい状況ではありません。体を強くするために欠かせない超回復は、以下の通りです。体に適度な休養を与えることで得られる超回復!(筋肉と筋力がつく過程)

Aはトレーニング前、Bはトレーニング後の状態です。トレーニングの結果として筋細胞の構造が乱れ、筋力が少し低下します。図では、BがAより下に位置しているのはそのためです。Cは約24〜48時間後の体の状態を表しています。筋力も少し回復し、トレーニング前と同じレベルに戻っているのがわかります。さらに、48〜72時間も経過すれば、筋力のレベルはスタート時に比べてやや上がっています。Dの時点でやっと超回復が起きているのが確認できます。

ここで24〜72時間を例に説明してきましたが、トレーニングした部位の大きさや運動量、普段の食事や睡眠によって超回復に掛かる時間はまちまちです。もちろん、それ以上に回復日を設ける場合も多いので、あくまで目安だと思ってください。もしわからなければ、知識や経験の多いパーソナルトレーナーに相談すると良いでしょう。